宇部の街を歩いていると、ほのかに異国の雰囲気を感じられる一角に出会う。
そこにあるのが、“古着屋「MIMIC」とカフェバー「HIRAETH」”。
一見、別々のお店のように見えるが、どちらも同じ空間にある。
そして、どちらも「みきさん」というひとりの女性がつくりあげた場所だ。
ここは古着屋さんであり、カフェバー。
共通しているのは「自分のペースで過ごせる場所」だということ。
誰かに急かされることも、何かを演じる必要もない。
ただそこにいるだけで、落ち着ける。
そんな空間と時間が、この店にはある。
みきさんと古着の出会い

みきさんは福岡県出身で、現在は宇部でお店を営みながら地元でお父さんのお店を手伝う2拠点での生活を送っている。
初めて“服を自分で選ぶ楽しさ”に気づいたのは小学生の頃。
7歳年上のお兄さんに連れられて訪れたリユースショップだった。
安くて、それなりのブランドが手に入る。
選択肢も広くて、子どもながらにワクワクした。
でも、その頃はまだ“古着”という意識はなく、“気軽に楽しめる服”だった。

初めて本物の古着に触れたのは中学3年生のとき。
地元福岡の天神大名をひとりで歩いていたときに入った古着屋で、その空気感に感動を覚えた。
新品にはない色落ち、誰かの時間をまとったような布の手触り。
そこで初めて、“古着っておもしろい”と思った。
高校時代は放課後になると、制服のまま古着屋を巡るようになった。
通い詰めるうちに、お店のスタッフさんと仲良くなったり、自分の服選びに新しい楽しみ方を持てるようになったり。
古着を通じて、ファッションが自分らしさを形にする方法だと気づいたのもこの頃だった。
“お店をやりたい”と思った高校3年生

高校3年生のある日、“お店を持ちたい”と思った。
何を売るかは後回しで、とにかく“自分の店 ”という空間を持ってみたい気持ちが先にあった。
そこで自然と浮かんできたのが、“古着屋”という選択肢。
好きだったから、という単純な理由。
でもその直感は、今思えば正解だった。
友人たちにアンケートを取って、店の名前をMIMIC(ミミック)に決めたのもこの頃。
自分だけで決めるより、誰かと一緒に選ぶことの方が楽しかった。
食にも興味があったみきさんは、カフェバーも併設することを考えていた。
この時点では、まずは古着屋としてスタートを切った。
福岡での大学生活と宇部でのお店

将来の選択肢を広げるため、そして子どもの頃から憧れていた海外との接点を持つために、みきさんは留学もできる四年制大学へ進学した。
学費の半分は奨学金で、もう半分は自分でアルバイトをして支払った。
地元福岡県で進路として選んだ大学では国際色の強い学科に所属し、2年生で留学を目指して準備していた。
しかし、ちょうどそのタイミングで新型コロナが世界中を覆った。
留学は白紙となり、授業はすべてリモートに切り替わった。
そんな中でも、みきさんは大学を辞めなかった。
せっかく1年間通ったのに、ここで終わらせるのはもったいないと思ったから。
そして、4年制大学を卒業しておくことで、今後の選択肢が広がるという考えもあった。

この頃から、みきさんの生活には“宇部”という土地が加わる。
みきさんの祖母が宇部市に所有していた空き物件が使えることになったことをきっかけに、古着屋として週末だけ営業を始めた。
大学の授業を受けながら、実家の仕事も手伝い、さらにアルバイトも掛け持ちして、土日は宇部で店を開く。
驚くほど忙しい日々だったが、“使命感”ではなく、“心からの自分の想い”があった。
カフェバー HIRAETH の誕生と本格始動』

大学卒業後、2022年から本格的にお店を営業しはじめた。
古着屋としてのMIMICに加えて、カフェバーとして営業するHIRAETHを加える準備を進めた。
様々な人が遊びに来やすいようにと、古着とは違う方向性としてカフェバーを選んだ。
2024年8月10日。
高校時代から思い描いていた“古着とカフェバーがひとつになったお店”が形になった。
夢がかなったというより、「ようやくスタート地点に立てた」とみきさんは振り返る。
営業は金曜~月曜の週4日。
13時から24時まで開けている。
火曜から木曜は、再び福岡に戻り、お父さんの仕事を手伝う。
二つの土地を行き来する生活は忙しそうに見えるけれど、みきさんにとってはちょうどいいバランス。
「どっちも、わたしに必要な居場所」と語るその姿が、印象的だった。
古着とカフェと、人との出会い

MIMICの古着はメンズを中心にセレクトしているが、全体としてどこか“かわいらしさ”が漂っている。
ガチガチにジャンルで分けるのではなく、服を自由に楽しんでもらいたいという想いがある。
「古着だから価値がある」とは思っていない。
大事なのは、その服を着て自分が心地いいかどうか。
それがみきさんの考え方だ。

HIRAETHでは、みきさんが旅先のベトナムで感じた「誰とでも自然に話せる空気感」を大切にしている。
カウンターだけの小さなスペースは、お客さん同士の会話が自然と生まれる。
ドリンクメニューも個性的だ。
コーヒーや自家製ジンジャーエール、タイティーなど、カフェとしてのメニューも充実しているが、アルコールにもこだわりがある。
例えばビールだと、世界中の銘柄を一種類ずつ仕入れており、1ダースなくなったら次の国へ切り替わる仕組み。
どの国のビールが飲めるかは、その日次第という“偶然の楽しさ”がある。
お酒が置いてある棚は、みきさんの“気になる”が集められていて、訪れるたびに新しい発見がある。
これからのこと

みきさんがこれから大切にしたいのは“平穏な暮らし”。
それはお店の経営においても、みきさん自身の生き方においても同じだ。
「特別なことをしたいわけじゃない。ただ、自分が心地いいと思える空間で、お客さんにもリラックスしてもらえたらうれしい」
古着とカフェと、人との出会いがある。
名前はふたつ、だけど、心はひとつ。
この場所は、そんなみきさんの日常そのものだ。
店舗情報
店舗名 | 古着 MIMIC カフェバー HIRAETH |
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住所 | 〒755-0042 山口県宇部市松島町9−14 |
営業時間 | 13:00〜24:00 |
定休日 | 火 水 木曜日 |
SNS | MIMIC Instagram、 HIRAETH Instagram |
駐車場 | なし |
取材日 | 2025年5月30日 |
うべとっぴん | カフェバー HIRAETH 古着 MIMIC |
※こちらの記事の内容は2025年8月1日現在の情報です。
記事は内容、金額等変更の可能性があります。
最新の情報についてはHP等でご確認、または、店舗等にお問い合わせください。