商店街には銀河がある。
上にではなく、横に。
ここはどんな場所なんだろうか。
どんな人が何をしているのだろうか。
聞いてみるのが一番早い。
カメラとペンを携えて、ひとり銀河へ入って行く。

目次

『店名の由来』

出迎えてくださった店主の福永さん。
この日は二日後から始まる展示に向けての搬入が行われていた。
綺麗なガラス細工が所狭しと並べられている。
作家さん自ら作品を展示されている傍らで、福永さんのお話を伺う。

まず一番気になっていること。
お店の名前についてだ。
ここは「GALLERY(ギャラリー)」で間違いないとは思っているのだが、なぜ「GALAXY(ギャラクシー)」なのか。
オープン準備が着々と進む中、お店の名前が決まらずにいた。
当時まだ「GALAXY」と名のついた商品が出回っておらず、まだ馴染みの少ない言葉だった。
辞書で意味を調べてみると「銀河」・「小さな美しいものの塊」と出てきた。
小さな美しいものの塊。
お店の目指すところは「アート」と「クラフト」。
「芸術」と「プロの手作り」。
「GALAXY」の持つ意味がお店のコンセプトにピタッとハマり、名前が決まった。
「銀河」にかけて今からおよそ半世紀前の7月7日、七夕の日にオープンした。

『最初は荒物屋から』

福永さんは幼少期から商店街で育ち、高校卒業後は横浜で大学時代を過ごして宇部に帰ってきたのは今から50年ほど前のこと。
お店のスタートは現在のようなギャラリーではなく、雑貨や荒物の販売をお母様と一緒にされていた。
まな板や臼杵、竹ざるや籠などを扱っていた。

『遊びが仕事に繋がった転換期』

仕事そっちのけで遊んでいた。
遊びとは車で日本全国旅に出ることであり、お店を3ヶ月ほど閉めて出かけることもあったそうだ。
旅のお供はフォルクスワーゲンのデリバリーバン。
この車種は2台乗り潰すほど福永さんのお気に入りだったそう。
小さな空冷エンジンでボディは鉄製。
空調はついていない。
そんなところが愛せるポイントだと、懐かしそうに話してくれる。
お寺の駐車場に車を停めさせてもらったり行く先々で温泉に入ったり、コンビニは無いが当時たくさんあった個人商店で食事を摂ったり、自由に旅を続けた。
行き先はある程度決めるがときには観光地には行かないこともあった。
旅が、人と物の出会いのきっかけになった。
この頃の旅での出会いが今でも繋がりとして残っている。
いつかギャラリーをやってみたい、そんな想いを胸に抱いていた福永さんは兵庫県丹波市にある民芸館に遊びに行き、そこで館長さんに話を聞いた。
館長さんから「宇部市の人口(当時約17万人)だと商売として成り立たせるのは難しい。30万人はいないとやっていけないよ」と言われる。
やめたほうがいいと言われると、俄然やる気が出てくる。

福永さんいわく〝一番燃えた″そうだ。

『やっぱり人』

オープン当初は山口県内の作家さんの展示は行わなかったそう。
県内の作家さんであればお客さんへ「直接作家さんの元へ行って自分で探してみる方が面白いですよ」と促していた。
今では山口県内の作家さんの展示も積極的に行なっている。
山口県内の若くていい作家さんの手助けになればと、そんな想いで。
展示時期は作家さんに寄り添って決める。
作家さんのスケジュールはもちろん、季節感も大切にしている。
当時から今でも変わらないのは、作家さんの元へ自ら足を運ぶこと。
いい品物でも、人間が良くないとダメ。
気品、正直さ、色々な魅力を見つける。
そして相手にも気に入ってもらえる人間になるように日々努めている。
若い作家さんたちと「一緒に育つ」ことに注力している。
この商売は「五感」が何よりも大切だと。
気品を一番感じるのは、やはり作品から。
努力している人は作品を見ればわかる。
これは長い間続けてきたこの商売で培われてきた感覚。
しかしこれは勘であるから、失敗することもある。
これまで何度も失敗してきたが、小さな商いだからこそまた頑張ろうと思える。

『感性、アナログ、五感』

幼少期から商店街の移り変わりを見てきたが、一番大きく変わったのは消費動向だという。
消費の舞台が店先からインターネット、ネットショッピングへと移る。
小さな商いと広大なインターネットの海。
これに対抗できるのが「五感」でありそれこそが「アナログ」の強さだ。
例えばマグカップを買うにしても、人それぞれ指の長さや手の大きさは違う。
実際に手に取って、使い勝手を確かめる。
使い勝手は人それぞれの感覚だ。
「GALAXYふくながさん」は展示期間中に作家さんが在廊する場合も多く、直接お客さんが作家さんと言葉を交わすこともできる。
広大な海の水面にはないが、自ら潜らなければ見えてこない深海の景色に出会える。
これこそがアナログの強さだろう。
アナログを大切にしていることの表れとして、葉書のDM(ダイレクトメッセージ)を見せてもらった。
切手は記念切手を使い、送る相手に合わせて添える言葉を選ぶ。
この人の五感には何が響くのか。
手作りのDMには温かみと福永さんの感性を込める。
気付かないところで頑張るのは、喜んでくれる相手の顔が浮かぶからだろうと筆者は考える。

『感性を探して』

デジタルの時代を生きている我々世代が感性を磨くためにできることを聞いてみた。
いわく
「デジタルとアナログを両方上手に使うこと」と「自分でやる部分に感性が出てくる」と答えてくれた。

筆者はカメラマンなので、カメラで例えてみる。
デジタルカメラが主流になった昨今、高度な技術が必要な部分はカメラが自動でやってくれる。
しかし、いつシャッターを切るのか、どの部分を切り取るのかは感性=アナログでありその人の感性が一番出てくる部分だ。
デジタルの時代にアナログな部分を探すことが、感性を探すことになると感じた。
最後に面白い話を聞かせてもらった。

今、ますます地球が小さくなっている。
日本人が生き残るには感性が重要。
日本人の感性は「真似ではなく、オリジナリティー」。
遥かヨーロッパからシルクロードを経て、日本は文化の最終到達点。
そこで日本人らしさを出すために頑張る。
そうしないと生き残れない。
そう考えている。

商店街の銀河で、あなたの感性を探してみるのはいかがだろうか。

店舗情報

店舗名 GALAXYふくなが
住所 755-0029
山口県宇部市新天町一丁目3-9
営業時間 10:00~18:00
営業日・定休日

営業日は展示スケジュールに準じます。定休日は水曜日。
詳しくはお問い合わせください。

TEL 0836-21-0085
取材日 2024年5月14日
駐車場 あり
うべとっぴん https://ube-toppin.com/shop/368/

※こちらの記事の内容は2024年5月31日現在の情報です。
 記事は内容、金額等変更の可能性があります。
 最新の情報についてはHP等でご確認、または、店舗等にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

山口県宇部市 写真館 Blue Photo Base共同代表。
新天町商店街で写真館を営んでいるカメラマンです。
写真と文字で、あなたに届けます。

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